我々の世代は「サービス」という言葉に、本質的な物にプラスして何か付加的なモノを提供するというイメージをもつ。つまり「おまけ」だ。そしてサービス産業に働くと言えば、接客業に従事することを意味したように思う。役務の提供という意味もあろうが、「奉仕」というような人間の誠意や善意に基づく自発行為も含まれていた。
サービスは、こうした人間の行為そのものから、コンピューターがそれを代行する時代に変わろうとしている。まったく人を介さなくとも、買い物ができたり、情報を得たりすることができる時代が到来したのである。購入者の満足度は、接客者の態度やマナーからくるものより、情報や品数の多さ、便利なシステムに因ることが大きくなった。もっとも、店員のマナーや言動は、盲目的にマニュアルを丸暗記しただけの見せかけのものだから当然だが。
そうすると、サービスの良し悪しはデータベースの量とコンピューターソフトのでき具合に拠ることになる。これが十分でないと顧客の満足など到底得られるわけはない。ITに対しての投資が、これからの企業の盛衰を左右する問題であると言われる所以だ。米国にこの点で遅れた金融機関が、膨大な投資を一社で賄えなくて合従連衡しつつある現状はまさにそれである。
私がスペイン出張で、国内線が遅れたため日本への国際線を乗り逃がした顛末はすでにご報告した。その際何組かの日本人旅行者がいたが、関西空港に帰国予定の人達はサービスの違いによって明暗を分けたのである。
国内線の遅れを証明するチケットを示した先の窓口によって、ルートが違ったのである。いずれも係の使用したコンピューターソフトの違いによるものだ。帰りの便はいずれもがらがらだったから、人数で切られるはずはない。
ある年老いた夫婦が、アムステルダムからタイのバンコク経由で関空に至るルートであるのに対し、若い女の子が私と同便で成田に帰国し、それから大阪まで国内便で、と言う具合に違うのだ。時間も成田まわりが数時間早い。聞いてみると女の子はJALの窓口に行ったらしい。外国の航空会社は日本の国内便のデータがないのか、ソフトがカバーしていないのだろう。さすがJALで、ナショナルフラッグだ。後から知ってがっくりした老夫婦が、もう日本の航空会社しか乗らないと言っていたのはもっともだ。高い運賃がうなづける。
今日のニュースによると、オームの系列の会社がつくったソフトが官公庁や大企業で使われているという。もしかしたら、ミス入力すると「ポアせよ!」とでるのかもしれない。
|