その娘は、駅備え付けのラックに並べられたチラシのひとつにいた。
伸びやかでしかもまろやかカーブを描いた肢体が、小さな水着からはみ出している。
その電鉄会社と同系の遊園地プールの安っぽいチラシだ。よく見ると、寒いときに撮った写真らしく、彼女の全身に鳥肌がたっている。売れないモデルで、何でもお金になる仕事はやるのだ。私は年がいもなく、豊かだがまだ少し幼さの残る姿態と、世にでない者がもつ一種の屈折した表情に魅かれてしまった。私にまだ涸れ切れない男が残っているということだろう。
2枚ほど鞄に入れ、会社にもち返った。さっそくスキャンし、私のコンピューターのデスクトップを飾ることになった。コンピューターをオンするとき毎回挨拶することになる。
世にあまり知られない不運なカワイイ女の子、このオヤジが隠れたファンだからね!
会社のウルサイ女性連には見つからないよう気を遣ってきた。それは大変だった。
それが3ヶ月前から、我がふるさと信州の山々に代わった。彼女、藤原紀香があまりに売れ過ぎて今さわぐミーハーと一線を画したいから(!)。たしかに彼女に魅かれた私が、世の中にいっぱいいるのですね。ミーハーな私たちが。
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