コンクリートの品質を示す代表は強度であろう。
圧縮、引張り、曲げ、せん断などなどいろいろあるが、コンクリートは圧縮強度に尽きよう。コンクリート技術者はこの数字に囚われて人生を過ごす。
数字が大きければ、過剰品質かと悩み、もちろん数字が低ければ不良を恐れる。
げに恐ろしきは水和反応の気まぐれか!
若い頃、膨張材を使ったヒューム管の開発にかなりのエネルギーを費やしたことがある。いわゆるケミカルプレストレスを導入し、管の耐荷力を上げる方法だ。
通常のプレストレスコンクリートは、高張力の鉄筋を引張ったまま拘束することにより、コンクリートに圧縮応力を発生させておく。外力がかかった時、その分相殺されるから見かけ上は耐荷力が増す理屈だ。
ケミカルプレストレス方式は、膨張するコンクリートが鋼材を同時に引張り、そのまま硬化することによりコンクリートに圧縮応力を残しておく。これがとにかく微妙であった。コンクリートはあらゆる方向に自由膨張するものだから、鉄筋でうまく拘束しないとヒビワレするのだ。膨張量も条件によって異なるから、導入されるプレストレス量もばらつきがある。従って製品の耐荷力もばらつく。
何本不良品をつくっただろうか?無惨にひび割れた製品の数々が今も目に浮かぶ。
自信のないまま納入したZ市の下水道、クレーム取替えの悪夢に数年悩まされたものだ。しかしなにもなかった。否、発覚しなかった!?幸運だった?
ところで、現在のケミカルプレストレス商品は何も問題はありません!念のため。
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