■夢追人のコラム:2000年02月15日号
No.09:コンクリート製品の低騒音製造に死角はないのか? 夢追人

コンクリート二次製品の成型方法には、セメントコンクリートに係わる人ならば誰でもが知っているように、大きく分類すると(1)遠心力を用いた成型 (2)振動加圧による即時脱型の成型 (3)振動機を用いた流し込み充填成型などがあげられる。
ここでは最も多くの二次製品メーカーで用いている(3)の振動機を用いた流し込み充填成型について、その方法とそれに用いられるコンクリートについて、実務者の立場から考えてみたい。

近時、地域住民の環境に対する意識の変化、ならびに作業に従事する従業員の健康などへの配慮から、騒音・振動の低減へのニーズが必然的に高まってきている。
そのニーズに対応し、一部に高流動コンクリートを用いた全く振動を与えないで充填するいわゆる自己充填による成型を取り入れた工場、あるいはバイブレーターを用いた微振動による充填成型、そして低周波、長ストロークを機構として取り入れた充填成型装置を用いた成型などが提案され、すべて含めてすでに40工場以上で実用に供されていると聞いている。

今後、時間を経るにしたがい、上記のような方法、あるいは他の新規な方法による低騒音・振動の充填成型法が普及し定着するものと思われる。こうした成型法の導入は、環境対策と作業員の健康管理が主たる目的ではあるが、導入に伴う経営の効率の問題や製品の品質についても重要であり安易に考えるべきではない。
特に製品の耐久性については未確認な点も多く注意を要する。
見聞するところ、高流動、中流動コンクリートを用いて成型しているメーカーはさまざまの課題を抱えているようだ。
例えば、   1.肌面の気泡残存
       2.初期強度発現の遅れ
       3.コンクリートの分離、沈降亀裂の発生
       4.コストの上昇
などが云々されている。

こうしたことは、導入の目的と本来の生産意図とが本末転倒になる危険性を持つことを意味する。導入時の基本姿勢として、品質と生産技術のレベルが下がることはあってはならないと考える。高流動、中流動コンクリートによる二次製品の成型技術は、純国産技術であることが誇れるようなものでなければならない。そのためには当面下記の取り込むべき課題を指摘したい。
    1.コンクリートの性状と成型のための付与エネルギーとの相関
    2.外観すなわち美肌の保持と安定した再現性(1との関連で)
    3.耐久性保証のための配合設計と付与エネルギーの相関
これらについては、コンクリートの観点から技術者は地道な実験や研究を積み重ね体得するものであり、間違っても充填成型装置からの解決に委ねてはならない。
なぜなら、これらはコンクリートそのものの研究によって90%は解決されるものと信ずるからである。さらに失礼を省みず言わせてもらえば、装置設計製作メーカーはコンクリートについて多くの情報と知識は持ち合わせているとは思うが、それを活かす知恵が不足している思うからである。

したがって、技術者はコンクリートに関し自らが得た知見とノウハウを基にコンセプトを確立して、装置の性能、型式を具体的に装置メーカーに指示、依頼するのが筋であろう。
ISOで言うところの経営資源の定義は(1)要員(2)財源(3)施設(4)設備(5)技法(6)方法である。前述した取り組むべき課題を実現することにより、(1)から(6)までの価値を高めることができるのである。


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