今回で中性化に関してはとりあえず終了する。 中性化が騒がれるのは、コンクリートに普遍的な問題であることと、その進み方が当初推測されていた速度より相当に早い事例が数多く出てきたためである。 しかし、それは理論的に誤りがあったわけではなく、実験室で作製されるコンクリートと現場で打設されるコンクリートとの間に調合(配合)、打込み方法、養生方法などに差があり、結果として研究者の概念と実際のコンクリートとの間にギャップが生じていたことが大きい。とりわけ、西日本地区における骨材事情の悪化が与えた影響が大きい。従って、西日本以外の地域では中性化が深刻な問題となることは少ないであろう。 ほとんどは施工不良の問題と混同されているように見える。
さて、ここまで評論家風なことを述べてきたが、以下に私の中性化問題に関して行った研究の一端を紹介したい。
私は、中性化の問題は鉄筋腐食の問題であるとの考えのもとに、亜硝酸塩系防錆剤による鉄筋の防錆対策を研究してきた。 問題はどうやって亜硝酸イオンをコンクリート内に浸透させ、鉄筋まで到達させて腐食を防止するかであった。ある時、モルタル中に極めて高い濃度に亜硝酸塩を練混ぜておき、それをコンクリートの表面に処理するというアイデアが浮かんだ。高濃度に添加できる亜硝酸塩として、亜硝酸リチウムを開発し研究を進めている中で、高濃度に添加したモルタルで表面被覆したコンクリートは中性化の進行が遅い事に気づいた。そこで、添加する亜硝酸リチウムの濃度を変えて、促進中性化試験を実施した。以下にその写真を示す。
コンクリート表面にわずか2mmセメントペーストを塗布しただけであり、従来の概念では中性化の抑制には殆ど効果がないと考えられていた。亜硝酸リチウムを高濃度に添加したことから、細孔径が小さい方にシフトしたことと吸湿性が高くなったことが相互に作用した結果と推測している。
従来、無機系の材料で中性化の抑制はできないと考えられていたことを覆す結果であった。 中性化抑制はしたいが、防火対策上樹脂系材料は使えない、或いは塩害対策と兼ねて処置したいという場合に好適である。
さて、次回よりアルカリ骨材反応に話しを進めていきたい。
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