さて、それでは仕上材による中性化の抑制に話を進めよう。
各種仕上材のの中性化抑制効果についての報告例を以下に示す。
これら仕上材の中性化抑制効果についての筆者は以下のような知見を持っている。
1.
- 無機系の材料の中性化抑制効果は小さい。
- モルタルの場合には、厚塗り(5mm以上)しないと効果が小さい。現宇都宮大の桝田教授等は、厚塗りした場合には、モルタルの厚さの1/2をコンクリートかぶりと考えて良いと報告している。
- ポリマーセメントモルタルとした場合でも、薄塗りのペースト(1~2mm)ではその効果は小さい。 ペーストでは、配合上微粉分が多くPVC(粉体容積率)が小さく、炭酸ガス透過性が高い。 アクリル樹脂とかSBR樹脂とかの差よりも、樹脂セメント比が高い程抑制効果は高く、明らかに樹脂の効果が認められるのは、樹脂セメント比が10%以上、好ましくは15%以上である。
- 珪酸塩その他の含浸剤の中性化抑制効果は小さい。 含浸性を付与するために、固形分濃度は低く抑えてあり、水が蒸発してしまえばそこは空隙となり炭酸ガスの透過を抑制できない。 しかし、加圧含浸しコンクリート中の細孔径に影響を与える場合には、中性化抑制に顕著な効果が得られることがある。
- セメントリシン、シリカリシンなどの化粧仕上材の中性化抑制効果は殆どない。
2.
- 樹脂系材料の中性化抑制効果は被膜性に左右される。
- アクリルとかウレタンとかの樹脂の種類は、中性化抑制に重要ではない。
- 溶液型(シンナーで希釈するタイプ)のエナメルで艶有りは、樹脂の被膜性が高く中性化抑制効果は高い。 塗料中のフィラー(粉体)の空隙を樹脂で埋めてしまっているからである。
- 溶液型であっても、含浸タイプの中性化抑制効果は期待できない。含浸タイプは塗料中に占める溶媒(シンナー)の比率が高く、溶媒が蒸発してしまえば空隙だらけとなるためである。
これは、エポキシ系であっても同様である。
- エマルジョンタイプは、溶液型に比較すると中性化抑制効果は劣る。これは、造膜が溶液型が透明ガラスのような膜を造るのに対し、エマルジョンタイプでは摺りガラスのような膜しかできず、炭酸ガスを透過させてしまうためである。
- エマルジョンタイプであっても、伸張型仕上塗材(弾性塗料)のように、エマルジョンが極めて融着し易くなっているタイプは透明ガラスに近くなっており、中性化抑制効果が高い。
以上、仕上塗材の中性化抑制効果について述べたが、上記のことは塗膜の耐久性については議論していない。 中性化し難いということは、ガス透過性が小さいということであり、コンクリート内の水分が抜け難く塗膜の膨れ、ハガレを生じ易い。 また塗料中のフィラーが少なく樹脂リッチの塗膜は、中性化抑制効果が高い代りに、チョーキング、クラックなど樹脂の老化が早く進む。伸張型仕上塗材は、塗膜が軟らかいため、汚れ易いなど一長一短がある。
筆者は、コンクリートの中性化抑制は仕上塗材に期待するのではなく、あくまでコンクリートで解決すべきと考えるが、実効性とコストの兼ね合いから仕上塗材の果たす役割も否定できない。
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