後添加効果のメカニズム
この様な後添加効果のメカニズムは、セメント構成成分ヘの分散剤の吸着挙動から次の様に考えられています。ナフタレンスルホン酸塩を例にご説明しましょう。
ナフタレンスルホン酸塩を練り混ぜ水と同時にセメントに添加すると、解離したナフタレンスルホン酸はまずセメントのC3AとC4AF表面に吸着します。吸着したナフタレンスルホン酸は負電荷を発生しますが、C3AとC4AFの激しい水和反応は進行し、形成された帯電層は水和生成物に覆われて遮蔽されてしまいます。練り混ぜ水中に残存するナフタレンスルホン酸は出現した水和生成物表面に吸着し新たな電荷を付与しますが依然C3AとC4AFの水和反応は継続し、新たに形成された帯電層も埋没してしまいます。セメントの初期水和が一段落するまでこの現象が繰り返され、セメント粒子の分散を維持するために大量のナフタレンスルホン酸が消費されます。
これに対して、セメントの初期水和が一段落した段階でナフタレンスルホン酸塩を後添和すると、C3AとC4AFの急激な水和が終息しているので水和生成物に消費される量が少なくて済みますし、遅れて水和反応が始まるC3SとC2Sにナフタレンスルホン酸が効率良く吸着するので少ない添加量でセメント粒子を分散出来るのだと考えられています。
弁慶の泣き所
ナフタレンスルホン酸塩やメラミンスルホン酸塩はいずれもセメントの水和反応を阻害せず、空気連行性を持ちません。この特性ゆえに高性能減水剤として単位水量を大幅に低減したり、使用量を増減してコンクリートのコンシステンシーを調節する事が出来るのですが、一方で比較的短時間で分散力が低下しスランプロスが生じると云う大きなハンデを背負っています。流動化コンクリートの製造には、図-3 に示すように3つの方法が考えられますが、工事現場で流動化剤を添加攪拌する現場添加方式を採らざるを得ない最大の理由がここにあります。
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