最近、透水性舗装が賑やかである。日本中がアスファルトとコンクリートで固められた当然の結果である。
1945年日本が敗戦を迎えたときには、道路は荒れ果てて惨憺たるものであった。勿論主要道路といえどもほとんど舗装されてはいなかった。その後都市部においては徐々に道路の舗装が行われるようになり、それが日本経済の復興と軌を一にして、1957年頃より急激に拡大していった。1960年頃になると、アスファルト舗装がセメント舗装を上回るようになり、道路舗装はさらに急カーブで伸張した。現在都市の道路舗装面は都市面積の10~15%に達しているという。
しかしながら、道路舗装が急激に伸張したとは云っても、1960年代の道路事情は未だ貧弱で、東京近辺でいえば、五日市街道は、米軍が都心から横田基地へ移動する軍用道路の役割を果たしていたため、戦車が通ってもびくともしない、厚いがっちりとしたコンクリート舗装であったが、その他の道路は、例えば天下の甲州街道でさえがたがたで、自動車教習所では車を走らせるときには道路の窪み部分に車輪を入れず、必ずどちらかの車輪を土の盛り上がった部分にのせるようにしなさい、と教えていたものである。この頃は、舗装道路であっても、雨水は地下に浸透し、誰も透水性舗装などは考えもしなかった。それが市街地道路の舗装が進み、それに伴って街路樹の生育に異常がみられるようになったため、1970年頃から、東京都建設局を中心にして、街路樹育成の観点から、透水性舗装の研究、テスト施工が実施されるようになったと聞いている。
いまの大都市は、コンクリートの高層建築物が林立し、道路は、車道も歩道もアスファルトやコンクリートで舗装され、地上に降った雨は下水に直行する以外に行き場がない状態である。したがって、一度大雨が降ると至る所で水が氾濫し、地下鉄にさえ雨水が流れこむ有様である。一方夏季には耐えられないほどに温度が上昇する。このような状況を打開したいがために透水性舗装に期待が集まるのは自然の成り行きである。
さて、現在施工されている透水性舗装は、アスコンを主体とするものである。この種の透水性舗装は実績もあり、セメントコンクリート透水性舗装よりも安価であるという利点を持っている。ただ、アスコン舗装には耐久性などで不安があるが、それは別として、絶えず雨水がアスファルトの間隙を通って地下に浸透することには、生物に対する安全性という観点で不安を感じる。現在アスファルト舗装の安全性は問題がないということで容認され、透水性アスコン舗装に対しても誰も安全上の疑問を抱いていないが、分解すると大量の環境汚染物質を吐き出す恐れのある材料の間を絶えず水が浸透することが長年月の間に問題を起こす危険性を本当に内蔵していないのであろうか。
セメントコンクリートを用いた透水性舗装は現状では高価である上に、強度的にまだ不安があるが、将来のことを考えるとはるかに魅力的である。戦後原子力に頼り過ぎたことが社会的に複雑な問題を起こしているが、透水性舗装では、規模は小さいとは云え、同じような問題を起こさないようにしたいものである。透水性舗装は環境にやさしいということで期待され、普及しようとしているが、かなり時間が経ってから実は環境にやさしくなかったというようなことがないようにしなければならない。
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