学生時代に所属していた運動部の話題で盛り上がるときがある。青春の一時期を共有した仲間の思い出や、若い肉体を極限まで痛めつけたあとの爽快感がよみがえったりするのであろう。
私はそうした場にいていつも落ち着かない思いをもつ。そうした話に同調できる自身の経験がないのである。言うならば汗と友情のスポーツ青春がないのだ。
確かに、野球、陸上、バスケット、柔道など中学から高校にかけ所属したクラブはある。ただし最長1年、短いもので1週間というごく短期間だけのものだ。それゆえ、友と競い合ったクラブ活動、などという甘い懐かしい思い出も湧いてくるわけはない。
高校時代軟式テニスに熱中し、国体出場を果たしたことが唯一自慢の妻からすれば、あんたには青春がないのよ!ということになる。もっぱらアタマの運動をしていたとの反論は、肉体賛美派の妻にはおかどちがいのいいわけとなる。
私が続かなかった理由は、運動神経の悪さより協調性のなさにしておきたいのであるが、今となってはどちらでもよい。運動神経のよさが自慢になるのは若い内だけだから。年を取っての偉丈夫やスポーツマンは本人が思うほど周りはカッコのいいものとはしない。年よりは......らしくするのが一番であると信じる。
一昨日突然M氏から電話をもらった。会社創業時に仕事のことで数回会って以来だからほぼ14年ぶりだ。彼がその日仕事で会った人物が私の古い友人で、たまたま私の話が出たのでつい懐かしく、とのことだった。3人の子供のうち長男はもう社会人ですよ、と昔と変わらない声で近況を話してくれた。そう言えば彼は私より3つばかり下のはずだ。
20年ほど前、先輩友人7,8人で起こした彼の会社が当たった。現在の年商は180億ほどになるという。海外へも進出を果たし現地法人も何社かを数える盛況ぶりだ。店頭に上場すべく時期をうかがっているという。彼は営業を総括し専務という肩書きらしい。IT銘柄ではないが、計測機器のメーカーだからその近辺にはいると言えるだろう。日本の最大手のセメントメーカーが20%を出資している,と言ったら知っている人もいるかも知れない。
彼とはテニス仲間だ。学生時代部活になじめなかった私のクラブ活動は30歳過ぎて実現した。そのころ住んでいた地域のソフトテニスクラブの5年間がそれだ。
残念ながら私の卒業ならぬ住居移転でそれが終わることになる。この団体活動は、30歳を過ぎて多少他人との付き合い方を覚えた顕著な成果だった。
彼は今に至るまでテニスを続け、市や県の大会にも出場し続けているという。あのころから抜群の運動神経と体力の持ち主だった。彼を見ると、ビジネスの成功はスポーツ能力に比例しているのでは?という仮説が出てくるのだ。その仮説が正しければ私のかかわるビジネスの結果はおよそが知れよう。
一度会いましょうよ、という彼の声はまったく屈託がない。スポーツマンは私にはまぶしい。
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