やはり年を取っての一人旅はきつい。もう二度としない、と家族と会社の友に宣言をした。今度のスペインへの旅で寿命が数年は縮まったと思う。
ラコルニャという都市が今回の旅の目的地であった。日本から出稼ぎ?に行っているサッカーの城選手が先日、3サポートの活躍でちらと新聞にもその名前が出ていたが、スペインの北の果ての街だ。4日ほど滞在し、明日城選手が来ると聞かされた日にそこを去った。
日本からスペインへの直行便はなく、ヨーロッパのどこかの都市を経由して行かねばならない。今回はアムステルダム経由とした。つなぎの宿のマドリッドのホテルで旅装を解いたとき、飛行機に老眼鏡を忘れたことに気づいた。
次の朝、空港のその航空会社を訪ね、届いていないか確認をしたあと、国内便に乗り換える段取りを考えた。ホテルのボーイの言うに、国際線と国内線のターミナルはかなり離れているらしい。タクシーを国際線で待たせておいて、用を済ませてから国内線まで送ってもらいなさいと忠告してくれた。その旨よくタクシーに指示しておきますとこれまた親切であった。この英語のできるボーイにたっぷりチップをはずんだのは当然である。タクシーの運転手がオーケーと頷きながら私にウインクした。
運転手を待たせたまま、次のフライトの時間を気にしながら航空会社のカウンターで、忘れた老眼鏡の探索結果を待った。朝が早いので職員が十分いないようだ。
電話で次々尋ねてくれるが、どうも空電話ばかりだ。結局見つからず、帰りの便のチェックイン時に再度申し出てくれと言う。これから仕事なのに心底弱った。
もし妻に言ったら、もうろくジジイ、それ見たことか、というに違いない。いまいましい。
急いで待たせてあるタクシーに飛び乗る。走り出したあと、運転手が何かべちゃくちゃ言っている。私は「国内線ターミナル」と覚えたばかりのスペイン語を繰り返した。
はっと気がつくと、運転手が違うではないか!違う車に乗ってしまったのだ。旅行用のバッグは前の車に置いたままだ!
それからが大変だった。「とまれ」とか「違う」とか「戻ってくれ」というスペイン語が出てこない。もともとそんな言葉は頭に入っていないのだ。車をどうにか止めると、怪訝な運転手をそのままに、駆けてもどり、たくさんのタクシーの中からやっとその一台を見つけ出す。運転手も心配そうな顔であった。危ないところだ。
かくして無事マドリッドからラコルニャに移動できたのである。ただし肝心な老眼鏡なしに。ほんとに仕事する気で来たのか?と自問自答する。
帰りに時間の余裕があり試してみたら、国内線と国際線のターミナル間は歩いて10分間程度の距離であったのは癪に障ることだった。
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