本コラムの3月9日号では、コンクリート製品メーカーの経営効率に関して述べた。今回は在庫(在庫回転率)についてふれてみたい。
コンクリート製品メーカーは従来から、年平均3~4ヶ月分の在庫を持つことにそれほど抵抗を感じてこなかったのではないだろうか?その背景には、
- ユーザーの要求納期に即応することは当然とする姿勢
- 機会損失の防止
- コンクリート製品の宿命である硬化時間の確保
- 資金の余裕、資金調達の容易、信用取引きの慣行
- 即応体制が取れる生産技術の欠如
などが上げられる。
しかしながらこの業界も、時代と経済環境の大きな変化の中で、よほどの優良メーカーでない限り資金の余裕はなく、またその調達にも困難が伴ってきているのである。経済が右肩上がりの時代には、在庫資金は前向きなものと評価され金融機関としても積極的であったが、現在の環境では後ろ向きの資金と捉えられ、調達もままならない。造れば売れた時代ではなくなったのである。
代表的素材産業であるセメントや製鉄は、宿命的に、設備を24時間連続稼動させなければ著しく効率低下をきたす。それでも、そうしたシステムを抱えるこれら大企業は、確度の高い需要予測に基づき生産計画が立て、時には生産調整や在庫調整を意図的に行っていると聞く。
また、自動車産業はそのほとんどが受注生産であるとも聞く。
それだけ在庫は経営効率に影響を及ぼすものであり、その基本的認識は経営者の必須条件でもあろう。
ひるがえって我々の業界はこの在庫調整についてどれだけ強く認識しているだろうか?
1.仕方がない、2.コンクリートの特性から難しい、3.納期が掴めない、4.設備と要員をフル稼働させなければ製造原価が下がらない、などの理由から安易に自己納得してしまっているのではないだろうか?私はこの点あきらめたくないのである。もう一度こうした先入観を見つめ直す必要があると思う。
一度に全てを解決する策はないにしても、知恵を出せば着実に小さな改善が積み重なり、やがて大きな課題を解決する方策も見えてくるのではないだろうか?まず行動ありきなのだ。こうした前向きな一歩は、大ベテランより実は業界の若い人たちのひたむきな情熱とチャレンジに拠るものであろうと私は信じている。
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