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水の話
■水の話 ~化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!~
3章 水資源 小林 映章

3.2 日本における水の使用と汚染

3.2.6 水質等に関する環境基準
—水質等に関してはいろいろな観点から基準が定められている—
(公共水域の環境基準値)
 世界各国で、人の健康を脅かすような環境破壊を招く恐れのある物質の量を規定するための環境基準値が定められています。わが国でも公共用水域の水質に対して、人の健康の保護に関する環境基準値(健康項目)と生活環境の保全に関する環境基準値(生活項目)の2つが定められています。健康項目は23項目で、全国の公共水域について一律に適用されます。地下水についても同一基準が用いられています。表18に環境保全の立場から定められた規制対象化学物質と安全範囲を指定する基準値を示しました。

(水道水の水質基準値)
 水道水は水道水質基準に基づいて管理されています(水道法に基づく省令)。表19に基準項目(46項目)と基準値、表20に快適水質項目(13項目)、また、表21に監視項目(33項目)を示しました。

 「基準項目」は全ての水道に対して一律に適用されます。したがって、水道水は必ずこの基準に適合していなければなりません。

 「快適水質項目」はおいしい水など、質の高い水道水を目指すもので、いわば努力目標です。したがって基準値ではなく目標値という表現を用いています。当然罰則もありません。

 「監視項目」は水質基準を補完するもので、健康に関する項目のうちで、現状では基準項目とする必要はないが、将来的に検出レベルが上昇する懸念があるため監視が必要だと判断された項目です。基準値ではなく指針値という表現を用いています。

(ダイオキシン)
 また、近年はごみ消却で発生するダイオキシンが大問題になっています。環境庁資料(ダイオキシンリスク評価検討会(1996))による、日本のダイオキシン類年間排出量は約5,100~5,300gで、ゴミ焼却施設が全体の約80%、産業廃棄物焼却施設が約10%排出しています。つまり、約90%が焼却施設から排出されています。

 「ダイオキシン」は「クロロジベンゾジオキシン」の俗称で、図16 のような分子構造をしています。

 図の数字1~4、6~9の位置に1個ないし8個の塩素(Cl)が付いてダイオキシン類となります。Clの結合数と結合位置により75の異性体(ダイオキシン類)ができます。これらのダイオキシン類は毒性が同じではありません。最も毒性が強いのは4個のClが2、3、7、8の位置に結合した、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)(図17)で、このものをダイオキシンと呼ぶこともあります。

【ダイオキシン類の濃度は、各異性体の毒性が異なるため、毒性の強さを2,3,7,8-TCDDに換算した濃度(2,3,7,8-TCDD毒性等価換算濃度TEQ:Toxicity Equivalent Quantity)で表します。】

 ダイオキシンの水質環境基準は年間平均で 1 pg-TEQ/l 以下と定められています。


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