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水の話
■水の話 ~化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!~
3章 水資源 小林 映章

3.1 水資源の現状

3.1.2 日本の水資源
—日本は水に恵まれているが、一人当たりの降水量は世界平均の1/4、季節的、地域的格差が大きい—
 前節において地球上の水資源および世界的な水資源不足について概観しましたが、次に日本の水資源の状況をみてみましょう。日本は水の豊かな国と考えられてきました。それは一年間に降る雨水の量が多いということからです。日本はユーラシア大陸東海岸に位置し、世界有数の多雨地帯であるアジアモンスーン地帯に属しています。

 全世界での一年の平均降水量は900mmから1,000mmといわれています。それに対して日本は1,700mmくらいです。これは赤道付近とほぼ同じくらいになります。しかも蒸発によって失われるのは、年間に600~700mmと、乾燥地帯や熱帯地方に比べて少ない量です。

(地域別降水量)
 図12にわが国の地域別降水量を示しました(平成7年国土庁調べおよび総務庁統計局国勢調査による)。わが国の降水量は関東より東側が比較的小さい値を示していますが、ほぼ国土全域で万遍なく降水がみられることが分かります。

 わが国の単位面積当たりの降水量は世界平均よりも多いのですが、年平均降水量に国土面積を乗じ、全人口で除した、人口一人当たり年平均降水総量をみると、約5,200m3/年・人 と、世界の平均である23,000 m3/年・人 の1/4程度で、諸外国と比べて特に水に恵まれているとは云えないようです。

(地域別水資源賦存量)
 次に、降水量から蒸発量を差し引いて、そこに当該地域の面積を乗じて求める、「水資源賦存量」を見てみましょう。図13に地域別水資源賦存量を示しました。図の数値は、

平均水資源賦存量: 降水量から蒸発量を差し引いたものに面積を乗じた値(水資源賦存量)の昭和40年~平成7年(30年間)の平均

渇水年水資源賦存量: 昭和40年~平成7年(30年間)の降水量の少ない方から3番目の年の水資源賦存量

 昭和40年から平成7年の水資源賦存量の平均は約4,200億m3ですが(注意:図13は1人当たり)、10年に1回の割合で発生する小雨時の渇水年水資源賦存量を地域別に集計すると、約2,800億m3で、平均水資源賦存量と渇水年水資源賦存量の差が大きいことが分かります。すなわち、平常時と小雨時の差が大きいことが理解されます。

 人口1人当たりの水資源賦存量は、日本では約3,400m3/年・人 で、世界平均の7,100 m3/年・人 の約1/2弱です。

(水資源賦存量の地域・季節による格差)
 図13によると、わが国の1人当たりの水資源賦存量は地域により著しい差があることが分かります。

 さらに、季節的な変動が大きく、ほとんどの地方では梅雨期や台風期に雨が多く、また日本海沿岸地方では冬期にまとまって雪が降ることが多く、これらの中間期には少なくなっています。このため、河川の流量も影響を受け、降水期には水害が発生し、中間期にはしばしば水不足となることは毎年経験しているところです。

 したがって、水資源賦存量のうちかなりの部分が利用されないまま海に流出しています(3.1.3参照)。すなわち、日本の河川の勾配が諸外国の河川の勾配に比して著しく急峻であることが、雨が季節的にまとまって降ることによる水資源の損耗と国土災害を増幅しています。


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