第6章 土 圧
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6.4 土留め矢板に働く土圧
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仮設構造物の矢板は、工事が完成したときは、取り払われる性質のもので
あるから、必ずしも洗練された厳密な土圧計算が最良のものであるとは限ら
ない。構造的には剛性で、築造後に土圧が加わる擁壁とは異なり、いくらか、
たわみ性で、しかも、施工中にも土を支えなければならない矢板は、理論だ
けでは土圧を推定することは困難である。一般に矢板に加わる土圧は、土の
性質と矢板の変形量によって決まると考えられている。
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6.4.1 土留め矢板に働く土圧
(1)砂質土の場合
砂地盤の根切りにおいて、切りばりで支える土留め矢板には、図−6.
21のような台形分布の土圧が作用する。
(2)粘性土の場合
粘土地盤において土留め矢板に働く土圧は、図−6.22のような三角
形分布をする。一般に土留め工の上端・下端のような、支えのない部分で
は土圧が小さい。
(3)粘性土の回り込みに対する検討
やわらかい粘土地盤では、せん断強度が自重を支えることができず、図
−6.23のように、掘削部へ回り込んで崩壊することがある。その安定に
対する検討は、(6.33)式による。
ここに、Fs:安全率
ψ:掘削底よりはかった角(度)
W=(γ・H+q)x(t/m)
γ:土の単位体積重量(t/m3)
H:掘削深さ(m)
x:や板よりはかった任意の半径(m)
S:掘削底部より下の地盤のせん断強度(t/㎡)
q:地表面に働く等分布荷重(t/㎡)
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6.4.2 岸壁矢板の安定計算
岸壁矢板の設計に必要な安定計算は要約すると、次の三つを決めることで
ある。この際、矢板に加わる土圧は土留め矢板と違い、真中のたわみが少な
いから、通常ランキン土圧あるいは、ク−ロン土圧のように静水圧状に働く
ものとして解析を行なう。
(1)矢板の根入り深さ
(2)アンカ−にかかる引張力
(3)矢板に加わる最大曲げモ−メント
また、矢板の根入り部が土圧に対して単純支持として働くか、固定支持と
して働くかで、その計算方法が少し変わってくるが、いずれにしても、図解
法を行なうのが便利である。
〔自由支持矢板〕
比較的、根入りの浅い場合で、根入り下端d'点が単純支持であると考え
て設計する(図−6.24参照)。
(1)矢板の根入り深さ
D'=0.6・H(H:矢板の自由部分の高さ)とする(図(a))。
(2)矢板に加わる土圧を区分して8~10個の集中力に置き換える(図(b))。
(3)それらの力による力の多角形および連力図を作成する(図(c))。
(4)アンカ−点と連力図の交点Aから、この連力図に接線を引くと、接点
Cは打ち込み深さを与える(図(c))。
(5)連力図における最大横距をηmax とすると、矢板にかかる最大曲げモ
−メントMmax は(図(c))
Mmax=ηmax・h・S
ここに、h:極距(t)
S:力の多角形の縮尺率
(6)力の多角形において、極から連力図の接線に平行な線の切り取る力Ap
は、アンカ−に加わる引張力に等しい(図(c))。
〔固定支持矢板〕
矢板の根入りが深くて、根入り部の下端が固定梁のような状態になる場合
は、固定支持矢板として計算する。等価ばり法および弾性線法などの図解法
がある。一般に、集支持矢板に比較して安定度が高く、根入りは大きくなる
が、アンカ−に加わる引張力および矢板にかかる曲げモ−メントは小さくな
る。
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