5.2章でも述べたように、乾いた砂のせん断強さは、ク−ロンの式(5.6)
で、c=0とおいた次式で表わされた。 τf =σ・tanψ
すなわち、砂のせん断強さは垂直応力と内部摩擦角で決まる。しかし水を
含むと、この垂直応力は正しくは有効垂直応力、すなわち、垂直応力σから
間隙水圧uw を差し引いた、土粒子間に実際に有効に働く応力でなければな
らない。したがって、砂のせん断強さは(5.15)式のようになる。
τf =(σ−uw)tanψ ・・・・(5.15)
また、内部摩擦角も図−5.22のように、砂粒子の形とその締まり具合、
および粒度分布で決まると考えられており、その値は、表−5.1の通りで
ある。なお、内部摩擦角は水中に浸った場合でも変わらないことがわかって
いるので、同じ値を用いている。
砂のせん断応力−水平変位曲線は、同じ垂直応力でも密な場合と、ゆるい場
合とではかなり異なり、ゆる詰めの砂では、ハッキリした破壊点が現れない
(図−5.23)。すなわち、ゆるいつまり方をしている砂は、せん断によ
って体積の収縮が起こるから、破壊が起こるまでは、せん断応力は変位の増
大につれて増加を続ける。しかし、密な砂がせん断を受けると、図−5.2
3(b)および図−5.24(b)のような試料の膨張が起こり、ついで、砂の
粒子構造がゆるむから、ピ−クが明瞭にあらわれる。
ゆるいつまり方をしている飽和砂が、体積変化を拘束された非排水せん断
を受けると、砂粒子間に間隙水圧が働き、せん断強さは排水せん断の場合に
比較して小さくなる。これに反し、密に詰まった飽和砂が非排水せん断をう
けると、せん断面における粒子の移動によって試料は膨張するから、負圧が
働き、排水せん断の場合に比べて、せん断強さは増大することになる。
この砂質土の膨張をダイレタンシ−といっている。この二つの場合の中間
に、図−5.25にようなせん断時の排水条件が、せん断抵抗に影響を与え
ない中間の間隙比が存在する。この間隙比を限界間隙比(ec)といい、その
ときの試料の密度を限界密度という。
限界間隙比は、砂の流動化に関係があり、限界間隙比よりゆるい砂は、地
震や爆破にような急激な衝撃に対して、せん断抵抗が瞬間的に減少したり、
消失したりする恐れがあると考えられている。ゆるい砂の場合、急激なせん
断に対して容積の減少が起きるため、間隙に過剰水圧が発生し、せん断抵抗
が減少して流動化するのである。
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