■亀の子コンクリート考
第十八回:資源は有効に利用されているか 小林 映章

道路の舗装はアスファルトが主流である。原子力発電に対する人々の反発が高まってきたため火力発電がいっそう重みを増している。自動車の普及は止まるところを知らず渋滞による燃料の浪費は減少しない。このような状態は現在の我々が如何に化石燃料に依存しているかを示している。化石燃料は使い易く、エネルギー効率が高く、しかもいまのところ安価で、一度使ったら余程のことがない限り手放すことができない魅力あふれる代物である。国全体、いや世界全体が化石燃料という麻薬の虜になっているようなものである。

化石燃料の中身は何だろう。これは自然が生み出した実に大切な炭素源である。化石燃料という適切でない名称のために、燃やして当然と考えがちであるが、いつかこの有効な炭素源を大量に消費したことを後悔するときがくると思われる。自然界では植物が太陽エネルギーを利用して日々炭酸同化作用により、我々が利用できる炭素源を生み出している。しかしこの炭素源は、中学の理科の授業で教わったように、炭水化物であって、主に炭素、水素、酸素より成り立っている。石油、石炭、天然ガス、オイルシェール、オイルサンド、あるいは将来を期待されながら海の底で眠っているメタンハイドレートなどはいずれも炭化水素で、炭素と水素から構成されている。現在、環境に優しいということで、炭水化物から合成した微生物分解性のフイルムなども市場に出始めているが、我々が至極あたりまえのものとして利用している合成繊維やプラスチック製品はほとんど炭化水素を元にして作られたものである。これらの製品を炭化水素以外のものを用いて作らなければならなくなったときのことを想像することは困難である。大切な炭素源をそれこそ「湯水のごとく」消費している状況は、低開発国において問題があることを知りながら焼畑農業で森林をつぶしている状況に類似している。問題があることを大部分の人が気づかないだけ余計に問題かも知れない。

そこで、アスファルト舗装について考えてみよう。オイルショックの時のようにアスファルト舗装を見直そうとした時期もあったが、いまは安くて速いということで珍重されている。しかし資源が大量にあるうちにその大切さを認識する必要があろう。アスファルト舗装からコンクリート舗装へというのが資源の有効利用の点からみて最も合理的な考え方であると思う。

一方、コンクリート材料はどうであろうか。コンクリートの主原料であるセメントは石灰石、粘土、珪石等よりなり、また骨材は砂、砂利、砕石等で、これらをコンクリートの原料として使うよりも他の原料として使った方がはるかに有益であるといった有力な説明は見つからない。勿論大量の骨材を消費することにより、砂や砂利の枯渇等の問題が起きているが、上記のような大切な炭素源を消耗するといった深刻な問題はない。資源の有効利用は今後ますます重要になることが予想されるが。それに照らしてアスファルト使用をコンクリート使用に変えるなどの処置も望みたいものである。同時に化学者、化学技術者には石炭液化などと共にアスファルトなどの高分子量石油系化合物の分解技術の開発を期待したい。


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