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水の話
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■水の話 〜化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!〜
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2章 いろいろな水 小林 映章

2.1 溶解成分の異なる水

2.1.3 海洋深層水
(2) 海洋深層水はどのような価値を秘めているか
 海洋深層水は地球の長い歴史の中で形成されてきたものですが、いまなお毎日太陽エネルギーを受けて再生を続けています。この宝庫から何が得られるかみてみましょう。

[1] 海洋深層水は太陽エネルギーを起源とする再生可能資源である
 上記のように、深い海は表面が温かく、深いところが冷たいままで残っています。熱帯の海の表面温度はほぼ26〜30℃で、その変動は年間でも3℃以内です。一方1,000mの深海では1年中4〜5℃です。すなわち、一年中上下で温度差がある、エネルギー貯蔵庫です。深層にはいつも冷水があるため、無限とも云えるエネルギーをここより取り出すことができます。

 この温度差を使って発電しようとする試みは1880年頃より始まり、現在では各国で盛んに研究開発が行われています。いま多くの人々は将来のエネルギーをまかなう重要な手段になると考えています。すなわち、太陽エネルギー利用の最有力手段と考えられています。

【太陽光は海の表面近くの水を温めるので、浅いところの水温が上がり、この熱がだんだん伝わって底の方も温かくなってしまうように思われますが、海水の熱の伝わり方は非常に遅くて、水深1m伝わるのに1〜7年かかると云われています。また、海水は横に流れる運動に比べて、攪乱のような縦方向の運動がとても小さいので、いわば風呂の水をかき回して全体の温度を同じにするような作用もほとんどありません。これにより熱が深くまで伝わるにはものすごい時間がかかってしまいます。】

 専門家は海洋の温度差を利用してどのくらいのエネルギーを取り出すことができると考えているのでしょうか。太陽から地球表面に降り注ぐ光エネルギーは83.6兆kWと云われています。地球の表面の2/3は海ですから、海には毎秒55.7兆kWのエネルギーが降り注いでいることになります。このエネルギーの2%を温度差発電に利用できるとすると、1兆kWの電気が取り出せます。現実的なところでは、赤道を挟み南北20度の緯度の内側にある海水を利用するとして計算すると、600億kWの電力がつくられることになるそうです。これは、一年間で、石油約170億トンに相当します。日本が1980年に使った全エネルギーは石油にして約4億トンです。

[2]深層水で魚(水産物)を育てる
 7月2日の朝日新聞朝刊に、農水省の外郭団体である「マリノフォーラム21」が03年度から相模湾で深層水を汲み上げて人工漁場を作る実験を行う予定であると報じられていました。

 海の浅いところは光合成が盛んなため、栄養物質が少なくなっています。しかし、深海では光合成が進まないため栄養物質は使われないままに貯まっています。

 全海域には窒素肥料だけでも、窒素に換算して20兆トンも含まれていると云われています。一年間に地球上の植物が利用している窒素肥料は窒素にして1億トン以下です。海洋に貯蔵されている肥料が如何に多いかが分かります。勿論、窒素だけでなくその他の栄養物質もほとんどが光の届かない深いところにあります。温度の低い深層の海は巨大な肥料の貯蔵庫です。

 この深層の栄養物質を表層に汲み上げて光合成により植物プランクトンを増やし、これで魚などの海産物を育てる方法は非常に現実的です。

 海水中の栄養物質の良い点は、生物が何回も利用してきたものなので、いろいろな成分が生物に利用しやすい形と割合で含まれていることです。

[3]海水から真水をつくる
 いろいろな方法が考えられていますが、海洋の温度差発電を利用して、電気と水を同時にとる方法が興味を惹きます。

 表層から汲んだ温かい海水を低い気圧にさらして水蒸気を発生させ、この水蒸気でタービンを回して電気を起こします。仕事を終えた水蒸気は深層水で冷やして液体の水に戻すわけですが、このとき、水蒸気を海水に触れないようにすれば液体になった水蒸気から真水が得られます。この方法を利用すると簡単に大量の真水を取り出すことができます。

 温度差発電とリンクしたこの海水の淡水化法は将来非常に有望なものと考えられます。

[4]深層水は非常にきれいである
 先にも述べたように、深層水は大腸菌等の微生物を含まないし、環境汚染物質もほとんど含まないので、非常にきれいです。

 現在栽培漁業等を行っているところで最大の問題の一つは使用する海水が汚いことですが、深層水を利用することでこの問題が解決されます。我が国でも、高知県深層水研究所などで、このきれいな深層水を利用して海産物を育てる研究を続けています。きれいな深層水を汲み上げて、海水のままその長所を活かして利用するというのは非常に魅力的です。

[5]海洋深層水のミネラルウォーターとしての利用
 深層水は表面水よりも多量の無機塩類を含み、また無菌であることをうたい文句にして、一部で非常にご利益のある水のように宣伝されています。しかし、ちょっと考えてみると何かしっくりきません。有益な無機塩類が多量に含まれていたとしても、それを私達の飲料水として利用するとなると、まず主要な溶存塩である塩化ナトリウムを除かなければなりません。しかし、これを除くとなると、カルシウム塩やマグネシウム塩、その他の無機塩類も失われてしまいます。

 また、きれいで有害物質を含まないといっても、これを海から取り出して飲料水として利用するということになると、陸から得られる水でも膜を利用して細菌や有害有機物を除くことはできます。何も深層水を選ぶ必要はありません。

 100年かかかって富士山の地下から湧き出した水とか、アルプスの清水とか、あるいは、海洋深層水というと如何にもすばらしい水のように聞こえます。実際は素晴らしい水でしょうが、これはよく考えてみたいものです。

 

 さて、海洋深層水が、太陽エネルギーをもとにした無限のエネルギー源ということになりますと、この利用は将来世界の重要な産業になり得るでしょう。深層水をペットボトルに詰めて売るのも、ビールを生産するのも一つの選択ですが、深層水の利用の本質はそのようなものではなく、海産物を育てる産業とか、温度差発電あるいはこれとリンクした真水の採取といったものが本質ではないでしょうか。公共投資もこのようなものに為されると、建設業界も新しいビジネスチャンスを得ることが出来るかもしれません。

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