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水の話
■水の話 ~化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!~
1章 水の構造と性質 小林 映章

1.1 水の構造

1.1.4 水の状態変化
—日常接している氷、水、水蒸気は一気圧の大気中での水の状態—
(水の状態図)
 前節で述べたように、水は固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの状態をとります。この3つの状態がどのような関係にあるかをみてみましょう。水の3つの状態の変化をみるには「状態図」が役立ちます。水の状態図とは、温度と圧力を変化させたときに、3つの状態がどのように変化するかを示したグラフです。それを図3に示しました(図は概念図であって、スケールは正確ではありません)。


図3 水の状態図

 図3で、固、液、気と示したのは,それぞれ固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)が生じる範囲を示しています。それらの境界線A、B、C上では互いに隣り合う2つの状態が共存することができます。たとえば、1気圧のもとで、温度を上げていきますと、はじめ氷であったものが、P点(0℃)で氷と水が共存します。この点は融点又は氷点といいます。ここを過ぎると完全に(液体の)水になり、さらに温度を上げるとQ点(100℃)で、水と1気圧の水蒸気が共存します。この点は1気圧での水の沸点です。

(三重点)
 温度が0.01℃、圧力が0.006気圧の点ではA線、B線、C線の3つが交わります。この点Tでは氷と水と水蒸気の3つの状態が平衡して共存できます。T点を水の三重点といいます。図からわかるように氷の融点(0℃、1気圧)と三重点(0.01℃、0.006気圧)は同じではありません。T点以下の温度、圧力では液体の水は存在することができず、温度の変化に応じて、C線を境にして氷が直接水蒸気になり(昇華)、また水蒸気が直接氷として凝結します。

(臨界点、臨界温度、臨界圧力)
 一方、A線で温度、圧力が非常に高くなり、374℃、218気圧(K点)以上になりますと、液体と気体の水は互いに区別できなくなり、A線はK点で終わりになります。この点を水の臨界点といい、その温度、圧力をそれぞれ臨界温度、臨界圧力といいます。ここでは詳しくは触れませんが、臨界点を過ぎた水は特殊な媒体として働き、この中では特異な化学反応が起きるようで、現在各所で精力的な研究が行われています。

(氷の状態)
 図では、氷については単に「固」として示しただけですが、実は図の氷は氷Ⅰhという状態を示したもので、氷は温度と圧力を変えると、氷Ih、氷Ic、氷II、氷III、氷IV、氷V、氷VI、氷VII、氷VIII、氷IX, 氷X、といった種々の状態の氷になります(氷IVと氷IXは準安定相)。氷Ihは水分子の4つの水素結合が109.5°の角度を作る、六方晶系の、大きな空孔のある構造で、私達が普段接する氷です。先に氷の密度が液体の水の密度よりも小さいと言いましたが、これは氷Ihの場合です。圧力が高くなるに従って水分子の充填度が高くなり、水素結合でつながれた2つの網目が入り組んだ構造をするようになります。それに応じて密度が上昇し、氷Ⅷでは1.66g/cm3以上になります。


■誤記訂正のお知らせ
本章において以下の誤表記の訂正を行いました。読者の方にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
(水の三重点について)
)× 0.06気圧
)○ 0.006気圧
2013年9月 コンプロネット

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