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伊藤教授の土質力学講座
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第4章 圧 密

4.4 圧密試験
一次元的な圧縮を受けている土の圧縮の速さと、その他の圧縮特性を明ら
かにするため図−4.15のような装置が用いられる。この装置は、圧密試
験機といわれる。


2枚の多孔板にはさまれた土の試料(厚さ20mm、直径60mmの円板形)に、
通常8段階で倍増する圧力(0.1kg/cm2、0.2kg/cm2、0.4kg/cm2、・・・・・・・12.8
kg/cm2)を加え、それぞれ24時間の圧密を行ない、経過時間と圧密沈下量との
関係を求める。こうして得られたデ−タは、次のようにして解析する。



4.4.1 時間−圧密量曲線
(1)圧密係数Cv の決定
時間−圧密量曲線から圧密係数を求める方法は次の2通りがあるが原則と
して飽和粘性土の場合にのみ用いる。
(a) √t法
縦軸に圧密量d、横軸に時間(min)√tをとり、図−4.16のように
プロット、初期の直線部分を始点方向に延長して補正初期点dとする。
補正初期点を通り、初期直線部分の傾斜の1.5倍の直線を引く。この直
線とd−√t曲線の交点が圧密度90%に対するt90、d90であるから、
圧密係数Cvは

(b) 曲線定規法
縦軸に圧密量d、横軸に時間(min) の対数logtをとり、図−4.17
(a)のようにプロットする。他に曲線定規(図−4.17(b))は、測
定結果のプロットに用いたものと同じ半対数紙に描いたものを用いる。



初期補正はd−logt 曲線と曲線定規を重ね、両者を上下左右に平行移動
させてd−logt 曲線に最も長い範囲で一致する曲線をえらび、曲線定規の
ゼロ線にあたるダイヤルゲ−ジの読みを初期補正値dとする。曲線定規の
50線にあたる時間をt50、理論圧縮終了時間をt100とすると、圧密係数
Cv は、



(4.10)および(4.11)式からもわかるように、圧密係数Cv は圧密の進行速
度に影響を与える係数で、Cvの大きいほど圧密は速く終了する。
(2)体積圧縮係数mvおよび透水係数kの決定
(a) 体積圧縮係数mv−−n番目の荷重段階における体積圧縮係数は、


mvは圧密圧力の増加に対する土の体積減少の割合を示すもので、mvの大
きいほど圧密沈下量は増大する。
(b) 透水係数k−−透水係数は飽和した粘性土の場合にのみ求める。各荷
重段階における透水係数は、


普通、透水係数は、圧密圧力の増大によって低下する。

4.4.2 圧密圧力−間隙比(体積比)曲線
各荷重と、それを加えたときの最終間隙比との関係を、両算術目盛のグラ
フ上にプロットすると、図−4.18(a)のような圧密圧力−間隙比曲線が
得られる。
曲線の形は、荷重の増加にともなって圧密の割合が減るような上に凹の形
となる。また、途中Pn で荷重をゆるめるならば、間隙比は多少増加するが、
もとの値までは回復しない。このabの部分を除荷曲線という。そしてふた
たび荷重を加えると、土の再圧縮が起こり、荷重Pn になるまでは上に凸の
比較的平たんな曲線となる。Pn の点から間隙比の急激な減少が起こり、ほ
ぼ原圧密曲線に重なってくる。以上のことから、土の圧縮は非可逆過程をた
どることがわかる。


いま図−4.18(b)のように、横軸に圧密圧力pの対数をとるようにし
てプロットすると、原圧密曲線の多くの部分が直線の形となることが明らか
となる。この原圧密曲線の傾斜を比較することで土の圧縮性を表わせる──
傾斜が急であるほど圧縮性が高い──このような対数的な表現のe−logp
曲線は、土の圧密特性を表わす場合の標準的な形として使われる。

(1)間隙比と体積比
土の間隙比をeとすると、土全体の体積比∫は、次のように表わされる(図
−4.19参照)。


したがって、一次元圧密の場合の圧縮ひずみを、間隙比の変化および体積
比の変化で表現すると、

このように、体積比で表わすと直線的に理解しやすい面もあるので、圧密
圧力−間隙比(e−logp)曲線とともに、圧密圧力−体積比(∫−logp)曲
線もよく用いられる。

(2)圧縮指数Cv および圧密降伏応力Py の決定
(a) 圧縮指数Cv
e−logp曲線(または∫−logp曲線)の直線部分の傾きを圧縮指数と
いう。したがって、図−4.8の直線部分の2点(e,p、(e,p) か
ら次のように求められる。

圧縮指数の大きい土は、圧縮性の高いことを示す。
(b) 圧密降伏応力Py
試料が地中から採取されたとき、上にのった土の重さで圧縮されて
いたため、その土はわずかにふくらむ。圧密試験で再圧縮されると、この圧
縮曲線図−4.18で説明したように、その土が地中で支えられていたとき
に達した荷重Py までは比較的平たんである。この荷重は圧密降伏応力と名
づけられる。これと同じことが自然界でも起こりうる。たとえば図−4.1
4でみるように、掘削や浸食で地表部の土が一部取り除かれた後、またその
上に構造物がのるような場合がそれである。以前に一度圧密されたことのあ
る土は、圧密降伏応力に達するまでは比較的圧縮性が低く、構造物で考える
と沈下量が比較的少ないことになる。圧密降伏応力を求めるには図−4.2
0にみるように、


(3)圧密降伏応力の意味とその応用
ある深さにある土の圧密降伏応力が、現在受けている荷重に等しい場合に
は、その土は正規圧密を受けた土といわれる。また圧密降伏応力が現在の荷
重より大きい場合には、過圧密を受けた土といわれて、この土が過去におい
て現在より大きな荷重を受けたことを示している。
この減少は上載荷重のほかに、乾燥収縮過程を通じて起こることもある。
それは過去において、土が大きな毛管張力によって圧縮されたか、または乾
燥の影響を受けたことによる。多くの堅い粘土には、この型のものも少なく
なく、このような土は、あまり大きな沈コを起こすことなしに、比較的大き
な荷重を支えることができる。
圧密降伏応力に達するまでは、その沈下量がかなり小さいという現象は、
圧密の促進に相当時間を要することとからんで、積極的に構造物の施工にも
取り入れられている。いわゆる、プレロ−ディング工法がそれである。軟弱
地盤に盛土や構造物を築造するとき、事前に期待される設計荷重以上の圧力
で、ある時間圧密しておくと、実際に荷重を受けてからの圧密沈下が少なく
(図−4.21参照)大きな変形を避けることができる。


プレロ−ディング工法は、圧密を起こす軟弱粘土層が割合に薄く、透水性
が比較的良好な場合の簡便な事前処理工法としてよく使われる。他の工法に
比べ、工費が少なくてすむのが大きな利点である。

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