■コンクリート製品技術者のための離型剤入門
2. 離型剤とコンクリート製品の仕上り(色づき,気泡)について 荻原 純一

(4) 製品の色付き

 離型剤は成分により比較的コンクリート製品に色がつき易いものがある。

 特に脂肪酸系添加剤は着色する傾向が強い。

 脂肪酸はセメント成分中のアルカリと化学反応を起こし石けん形成するためである。普通ポルトランドセメント中の主成分(約60%)と脂肪酸が反応しカルシウム石鹸が形成される。多くのカルシウム石けんは褐色を呈しているものが多い。

 一般にコンクリート製品の色付きと言われるもので離型剤の影響による色付きは褐色系統のもので黒色系の色付きは他の要因によるものが多いとされている。

 又、他に離型剤は以下の条件の元でより色付きを促進するので注意を要する。

  1. 油性及びエマルジョンタイプの離型剤は、高温時直射日光に当てて作業する現場においては、離型剤の塗布からコンクリートを投入するまでの時間が長い程、離型剤が変質、着色し、コンクリートに黄褐色の色がつき易い。特に化学反応型の添加剤を多く含む離型剤にはその傾向が大きい。

  2. 離型剤の使用濃度が濃いときは、コンクリートに色がつき易い。

  3. 合成樹脂系の離型剤は、コンクリートの着色は少ない。但し、蒸気養生等により被膜が軟化してコンクリート表面に転着するものは、着色する。(当社の離型剤に該当品なし)

  4. 離型剤が空気中の酸素により酸化を受け変質着色するものは、コンクリートに色がつき易い。

  5. 化学反応型の油性離型剤はドラム缶等に保管中水分が混入すると化学反応を起こし、離型剤が黒紫色化しコンクリートの着色の原因となることがある。


(5) 気 泡

 色付きと密接な関係にあり、特に脂肪酸系添加剤は消泡効果が大きいが、色付きが多くなる傾向となる。

 化学反応型離型剤で気泡を少なくするには添加剤量の多いものを使用し、反応を促進させ、型枠とコンクリートの界面の膜を厚くすることによりコンクリート表面に発生する気泡を覆い隠す必要がある。この時、色付きは多くなる傾向となる。

 界面活性剤を使用し型枠とコンクリートの界面張力を下げる(親水性を高める)ことによって、気泡を減らす方法をとっているものもある。このタイプは製造条件特に配合、打設量、振動条件等に性能が左右されやすいので、(色つきやスケールも)留意して選定する必要がある。

 また、一般に合成樹脂系は消泡効果が少ない。


(6) 色の変化及び色むら

 一般に、コンクリートは経日変化することが多く、その変化はコンクリートの組成、表面の乾燥状態、外界の状況などによって異なりコンクリートの色は厳密には複雑であり、その変化は表面の白華やコンクリート本体の中性化(炭酸化)等の影響を受けざるをえない。

 変化の主たるものは、エフロレッセンス・濡れ、外からの汚れである。

[参考資料]

  1. 面板脱型時の天候がブロック表面の色むら発生におよぼす影響は、本実験中最も顕著に現れており、雨の日に面板を脱型するブロックには強い色むらが発生する可能性が非常に大きい。

  2. 雨天に面板を脱型する場合には、時期を1~2日程度遅らせるなど、できるだけ面モルタルの硬化が進んでから脱型することによって、色むら発生の程度を少なくすることができる。

  3. 面厚および面モルタルの配合の相違が色むらの発生におよぼす影響は比較的少ない。

  4. 離型剤の種類によって色むらの発生傾向に幾分の差があり、また油性タイプの剥離剤を灯油で希釈して使用すると色むらの発生を助長するため注意が必要である

  5. 蒸気養生温度および控の状態は、蒸気養生温度が高く、控コンクリートのコンシステンシーが大きくなる(単位水量が多くなる)とより色むらが発生しにくい傾向があるため、ブロックの品質を損なわない範囲で両者の対策を同時に講じることがより効果的と思われる。

  6. 面モルタルの練り上がり温度を上げると色むらが発生しにくい傾向があり、さらに、成形直後に高い温度雰囲気内で養生するとより発生しにくい、これらの対策は、色むらの発生防止上の観点からみれば、特に冬期には効果的な方法とおもわれるが、コンクリートに急激な温度変化を与えるような条件設定は、コンクリートの品質上から好ましくなく、十分な注意が必要である。

  7. 色むらは、面モルタル表面の炭酸カルシウムの生成状況によって発生し、表面の炭酸カルシウム層の組織が緻密な部分とポーラスな部分とが混在することによって現れるものと考えられる。したがって、色むらの発生を抑制するためには表面に均一な炭酸カルシウムの膜を生成させることが大切である。

吉田、柴崎、若村;コンクリート積みブロックの面に発生する色むらに関する一考察
季刊 土木コンクリートブロック №157,1987より


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