セルテック株式会社
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■私のコンクリート補修物語
第3部 塩害による鉄筋腐食 堀 孝廣

3.13 塩化物イオンの浸透・拡散

 コンクリート表面に到達した塩化物イオンが、コンクリート内に浸透・拡散していく機構については、Fickの拡散第2法則が適用できるとされている。詳細は数学的な取扱いになるので、ここでは、拡散の考え方だけを紹介しておこう。

 風もないのに、遠くからカレーの匂いがしてきたり、芋の煮っ転がしを煮付けるときに、醤油、みりんなどが芋の中に染込むのも、鰤ダイコンのダイコンの中に鰤のうま味が染込んでいくのも、拡散現象によるものである。下の図は、ビーカー中央部に染料を1滴垂らした時の、色の広がりを示したものである。染料は、正規分布をとりながら徐々に拡散し、最終的には均一分布となる。拡散とは、このように流れのない状態で、自然に物質が移動していくことをいう。

 それでは、なぜこのような現象が起こるのだろうか。バットにパチンコの玉を入れて、中に色つきの玉を混ぜ、細かく揺すぶった時の状態を考えて欲しい。バットの中がすかすかの状態の時はたちまち混ざり合ってしまうが、隙間が半分ぐらいしかない時はやや時間がかかる。更に、隙間がバットの中に数個分しかないというような時には、揺すぶる腕が疲れるほどに時間がかかる。これと同じことが自然界では休むことなく進行している。パチンコの玉は、原子、分子、イオンであり、これらの粒子は熱エネルギーによって猛烈なスピードで飛び回ろうとして、周りの粒子と衝突している。すかすかな状態を気体に、隙間が半分ぐらいしかない状態を液体に、隙間が数個分しかない状態を固体に見立てれば良い。27℃の空気中で窒素分子は、405m/秒の速度で、43億回/秒の衝突を繰り返しているという。これは、ブラウン運動と呼ばれる現象だが、粒子の運動エネルギーは、熱エネルギーであるから、絶対零度(-273℃)の世界では粒子は動き回ることができず、拡散は起こらない。以下に気体、液体、固体状態でのモデル図を示す。

 拡散速度を表す拡散係数は、液体中を1とすると、気体中ではおよそ104倍、固体中では10−4倍である。コンクリート内での拡散は、空隙中の細孔溶液を通じて進むので、溶液内での拡散である。拡散速度は、濃度に比例し距離に反比例する。更に、時間のファクターを加味したものが、Fickの第二法則と呼ばれるもので、一般には、以下の式で表される。

 2次元の偏微分方程式なので、解を求めることは難しく、研究者によりさまざまな解が提案されている。私は、建研時代にたいへんお世話になった現宇都宮大学の桝田教授の提案した以下の解を使わせていただいている。この解は、コンクリート表面から、洗い流される塩化物イオン量を加味していることが特長である。

 以下に、上記の解を利用して行なったシュミレーションの一例を示す。

 次の図は、得られたこれらの係数を使用して、シュミレーションを試みたものである。

 上記の例は、飛来塩分の多さでは日本でも最大級の場所でのシュミレーションであるが、 凍結防止剤が散布されるところでは、同様な傾向が見られる。拡散速度の指標である拡散係数は、コンクリートの含水率とコンクリートの緻密さの影響を受ける。セメントの種類、及びW/Cと拡散係数の間には次のような調査結果がある。

 以上で、コンクリート内への塩化物イオン侵入に関するテーマは終了するが、コンクリート中でのイオンの移動は、細孔溶液を通じての溶液拡散であり、湿潤状態にあるコンクリートでは相当に速いということを理解していただければ幸いである。


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