株式会社浅見製作所
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■私のコンクリート補修物語
第2部 アルカリ骨材反応 堀 孝廣

2.9 コンクリートへの含浸方法

 コンクリート内にリチウムイオンをある量以上導入できれば、アルカリ骨材反応を抑制できることが明らかとなった。リチウムイオンをコンクリート内に導入する方法は、新設時にはコンクリート混和剤として添加すれば良いので容易だが、既設コンクリート構造物の場合には、どうやってコンクリート内にリチウムイオンを含浸させたら良いのだろうか。

 中性化したコンクリートのアルカリ付与の場合にも、珪酸リチウムを如何にコンクリート内に含浸させるかを考え、加圧注入、シートによる含浸などに知恵を絞ってきた。

 以下に開発した圧入器、とシートの写真をしめす。

 圧入器は、バキュウムで壁面に吸着し、Oリングを介した注入口を壁面に接触させて注入するもので、線状に注入するタイプ゚と面で注入するタイプの2種類を考案した。しかし高い圧力で注入しようとすると、とてつもない吸盤の面積が必要となる。例えば、φ5cmの注入口に5kgf/cm2の圧力をかけようとすると、98.1kgfの反力が働き、バキュウムは真空状態にしても1kgf/cm2にしかならないので、安全を考慮すると10φの吸盤が2個必要になる。また、コンクリート面がつるつるであれば問題ないが不陸があると、圧力の漏れが生じ易く、作業には熟練と時間を要した。 これらはいずれも、幾つかの現場で実際に使用したものであるが、どうにも作業効率が悪く、現在では使われていない。

 その他にも、片面をポリでラミネートした脱脂綿に薬液を含浸させ湿布する方法(湿布工法)、不織布をコンクリート面に貼り付け、不織布を通じて上部から薬剤を流し、下部に取り付けた樋で集めて上部にポンプアップして循環する方法(ナイヤガラ工法)など、いずれも実際の現場で施工を試みた方法である。これらの方法はいずれも、従来工法の刷毛・ローラー塗りなどに比べはるかにコンクリート内部への含浸効果は優れていたが、作業効率が悪く現在では実用化されていない。

 湿布工法では、薬液を含浸した布をコンクリート面に貼付け、所定時間維持した後撤去しなければならない。この煩雑さを回避するために、モルタル中に高濃度に含有させたモルタル工法を開発した。このモルタル工法は、表面保護、下地調整まで兼ねてしまい、しかも従来の左官仕事と全く同じなので、特別な技能・習熟を必要としない優れものであった。現在、塩害、中性化による鉄筋の腐食防止策として広く使用されている。7節での建築研究所を巻き込んでの大型部材によるアルカリ反応防止策は、刷毛による亜硝酸リチウム水溶液の塗布と亜硝酸リチウム高濃度含有モルタル塗布工法の組合せで行ったものである。しかし、結果としてこのような表面処理だけでは、アルカリ骨材反応対策としては不十分であることがわかった。それは、アルカリ骨材反応が皮膚病ではなかったからである。

 コンクリート内部の膨張は鉄筋で拘束されているとしても、鉄筋量とアルカリ骨材反応の反応性の強弱が問題であり、アルカリ骨材反応の膨張力により鉄筋が引き伸ばされてしまうことが多々あることも判明してきた。とするなら、コンクリート内部へリチウムイオンを供給しなければならない。 JR鉄道総研の宮本博士らとアルカリ骨材反応の抑制策を実験検討する中で、低圧注入工法が効果的であることがわかった。ひび割れへのエポキシ樹脂の低圧注入工法が開発されていたが、それをアルカリ骨材反応で入ったひび割れに適用し、エポキシ樹脂の代わりに亜硝酸リチウムの水溶液を適用したものである。

 広島の大盛建設コンサルタントでは、この低圧注入工法を更に発展させ、、アルカリ骨材反応の実物件に適用し・施工実績を重ねている。

 施工現場の写真を紹介しよう。この注入器具は大盛建設コンサルタントが開発したもので、漏れがなく長時間安定して1kgf/cm2の圧力をかけられる。亜硝酸リチウムの注入終了後には、無機系注入材を充填注入している。


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