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■コンクリート用混和材料の常識
第02回:界面活性剤とコンクリート用化学混和剤 藤田 康彦

現在市販されているコンクリート用化学混和剤の殆どは界面活性剤と呼ばれている化学物質を主成分としています。一般に、界面活性剤とは『2つの物質間の界面で作用し、その界面の性質をいちじるしく変えるもの』を言います。界面活性物質が溶液に溶解すると、2つの相の界面に吸着し、界面の表面張力を著しく減少させて起泡・湿潤・分散・乳化などの作用を呈します。

界面活性剤と言えば必ず出て来るのが水と油です。マンネリ気味ですが、やはりこれが一番わかり易いのでここでもこれを例として取り上げることにします。昔から折り合いが悪いことを“水と油”に喩えますが、ビーカーに油と水を入れて静置すると図のように2層に分かれて、上層の油と下層の水の間に膜のような界面が出来ます。水と油はいくらかき混ぜても溶け合う事はなく、すぐにもとの2層に分離した形にもどってしまいます。

ところが、このビーカーの中にセッケンや合成洗剤などの界面活性剤を加えてよくかきまぜると、油は微細な粒子になって水全体の中に分散して牛乳状になり、静置してもなかなか2層に分離しなくなります。この現象を乳化現象と言います。

界面活性剤分子は模式図で示すように、油となじみ易い親油基(疎水基)と水になじみ易い親水基の2つの相反する性質の部分から成っています。溶液中で親油基(疎水基)は油と、親水基は水とそれぞれ同時に結び付くので界面活性剤分子は2つの層をつなぎ止める働きをするのです。

図-1 界面活性剤の働き
図-2 界面活性剤分子の模式図

物質は、気体・液体・固体、のいずれかの状態で存在しますから、界面の組み合わせは全部で6通り考えられます。しかし、気体―気体の界面は存在しないので実際には5通りの界面で様々な現象が起こるわけです。水と油の場合は界面活性剤の働きによって無数の油滴が出来ることは今お話しましたが、AE剤によって無数の気泡が生成したり(水相―気相)、水中でセメント粒子が分散したり(水相―固相)するのも、この界面活性剤の働きによるものなのです。

それでは、コンクリート中のセメントと水の間に出来る界面における界面活性剤の働きについて考えてみましょう。セメントは、水の中で+に帯電するためセメント粒子間に凝集力が働き、機械的に相当激しく撹拌しても粒子は一様には分散せず、数個あるいは数十個が互いに集合して粒子の凝集体(フロック)を形成してしまいます。この懸濁液に界面活性剤を加えると、親油基(疎水基)はセメントと、親水基は水とそれぞれ同時に結び付いてお互いをなじませる作用をするので、セメント粒子は水中でバラバラにほぐれて個々に分散することが出来る様になるのです。

また、水と空気の間では、親油基(疎水基)が空気と、親水基が水とそれぞれ結び付いて独立した強く壊れにくい安定な気泡を形成します。

図-3 セメント粒子の分散模式図
図-4 空気泡形成

 界面活性剤はその分子中の疎水基と親水基とのバランスや構造によって、分散・湿潤・起泡・乳化などの異面活性作用が決まるといわれています。界面活性剤は、水溶液中で活性作用を示す部分の性質に応じて次の4種類に分類されています。それぞれに特徴を持っており目的に応じて使い分けられている訳ですが、これらの中でコンクリート用化学混和剤として用いられているのはアニオン系および非イオン系のものがほとんどです。

  1. アニオン系界面活性剤:水溶液中でイオン化し、陰イオン(アニオン)となる。
  2. カチオン系界面活性剤:水溶液中でイオン化し、陽イオン(カチオン)となる。
  3. 両性イオン系界面活性剤:水溶液中で陰イオン、陽イオンが共存する。
  4. 非イオン系界面活性剤:水溶液中でイオン解離しない。

図-5 界面活性剤の種類と分類

この様に、コンクリート用化学混和剤というのは界面活性剤をコンクリートに応用したものなのです。界面活性作用のうち起泡作用を利用したものがAE剤・起泡剤、セメント粒子を分散・懸濁させる性質を利用したものが減水剤・高性能減水剤、になります。また、乾燥収縮低減剤では界面活性剤の表面張力低減効果を利用しています。

余談ですが、建築学会ではコンクリート用化学混和剤の品質規準を コンクリート用表面活性剤の品質規準と表現し、『表面活性剤とは表面活性作用によって、コンクリートのワーカビリチーなどを良くするために用いる混和剤』と定めていた時代があるのです。この品質規準が制定されたのは1975年のことで、1982年には現在のJIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」に統合されました。当時は代表的な化学混和剤と言えば減水剤・防錆剤・流動化剤くらいのものでしたが、その後数々の化学混和剤が開発されてその種類も随分と増えましたし、今日ではごくあたり前に化学混和剤を使用する様になりました。

それでは次回は、AE剤・減水剤・AE減水剤の種類や性能について具体的に解説することにしましょう。それではお楽しみに。


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