フィルフォーマー
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■亀の子コンクリート考
第三十回:水の働き 小林 映章

水は自然界で最もありふれた物質であると共に、最も重要な物質である。コンクリートも、セメントに水が作用して造り出されている。水は重要で、ありふれたものでありながら、その本質はいまでも完全には判っていない。水の正体が判らないくらいであるから、これが加わって生じた物質が完全には判らないのは当然である。

水は単純液体でも、正常液体(分子間に特殊な相互作用や会合がない、無極性液体)でもなく、会合液体である。配位数(ある分子の周りを取り囲む別の分子の数)は4と5の間で、単純液体に比して極端に小さい。これは異方性の強い水素結合によるもので、このため水は隙間の多い分子配置で、非常に疎な構造体である。こんなことから、電磁波や磁界を印加した水は特異な作用があるといったような説が生まれるわけである。

コンクリートは無機の酸化物が水と結合した水和物よりなっている。すなわち、ここでの主役は結晶水である。よく知られているように、結晶水とは結晶中に一定の化合比で含まれている水で、その存在形式により、配位水、陰イオン水、格子水、ゼオライト水の4つに分類される。配位水は陽イオンに配位して錯イオンを形成している水で、〔Co(H2O)6〕Cl2のような水である。陰イオン水はCuSO4・5H2Oのような水で、陰イオン基の酸素原子の間にあって、水素結合で陰イオン基に結合している。配位水や陰イオン水は結晶を加熱すると段階的に脱離する。格子水は結晶格子中で一定の位置を占めているが、陽イオンにも、陰イオンにも結合していない。ゼオライト水は結晶中で格子の間隙や、層と層の間に存在し、連続的に脱水できる。脱水後の結晶格子は殆ど変化しない。

さて、上記の分類によると、セメント水和物の水は陰イオン水が大部分で、一部ゼオライト水があると考えられる。コンクリート全体ではこの他に、毛細管や空隙に存在する水がある。硬化したコンクリートの構成は、未水和セメント、水和物、毛細管水、ゲル水および空隙よりなるが、勿論ここでコンクリート強度の発現に寄与するのは水和物であろう。水和物の水は上記のように陰イオン水と考えられるので、その配位数はそのときの状態により段階的に変化すると考えてよかろう。したがって、コンクリート強度は、大きな空隙などの他に、セメント結晶の配位水の数によっても変化するはずである。

コンクリート中の水の役割に関する研究は多く、また解説も多い(例えば、小特集*硬化コンクリート中の水の役割:コンクリート工学,32,No.9(1994))。セメントの完全水和に必要な水量はセメント量の約40%で、25〜28%がセメントと化学的に結合し、残りはゲル水として吸着していると見積られている。したがって、水セメント比が25%を割るような超硬練りコンクリートでは、仮にゲル水がゼロとしても、未水和物が多いか、結晶水が不足したセメント結晶が出来ていると考えられる。コンクリート水和物を造る際に、水セメント比を大きくしていくと、コンクリートの強度が低下することは多くの実験で明らかであるが、これは水和に関係しなかった水が結晶間に介在して空隙を形成することによるものであろう。水セメント比を小さくし、理論値以下まで減少させると話は変わってくる。多孔質の透水コンクリートを造るときには、水セメント比を極端に減らして、加圧下で振動を与えて締め固めを行っているが、このようなコンクリートでも、水を理論値以下まで減らすことは問題で、強大な力でコンクリートを締め固めても、コンクリート本来の強度を十分発現させることは無理であろう。


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