■亀の子コンクリート考
第二十回:コンクリートの再利用 小林 映章

先週、コンクリートのリサイクルが難しいということを述べたが、やがて廃棄物の問題や資源の点でコンクリートのリサイクルが切実な問題になることが避けられなくなろう。コンクリートはがちがちに固まった無機の構造体であるが、このコンクリートのリサイクルにおいてもプラスチックなどの有機物のリサイクルが参考になることはいうまでもあるまい。

プラスチックなどのリサイクルで最大の問題の一つは不純物の問題である。ある特定の物質に着目したとき、不純物はその物質の性質を改良するために加えられることもあろうし、あるいは着色、印刷といったそのもの本来の性質の改良とは無関係に、商品の見映えや宣伝のために使用されることもあろう。これらの不純物はリサイクルにとって大きな障害であり、メーカーが自主的に改良を施さないと、将来国や公共機関によって何らかの規制が加えられことは避けられないと思われる。

さて、コンクリートの場合について考えてみよう。コンクリートのリサイクルを、廃棄すべきコンクリートを他のもの、例えば漁礁などに利用するのではなく、骨材やセメントとして再生することを想定すると、いろいろな問題が浮かび上がってくる。海砂の使用に伴って入り込んだNaClの問題、火力発電の廃棄物を利用したフライアッシュなどの混和材の問題、あるいは減水剤など各種混和剤の問題、さらに鉄筋は障害にならないか等々、問題になりそうなものが山積している。もしNaClがこの状態で多量に含まれているとしたら、セメントを焼成する程度の高温で処理して除かなければならない(NaClは融点800℃、沸点1413℃、溶融状態ではかなり揮発する)。混和剤などの有機物は加熱処理すると無くなるし、残存しているものは不溶化しているのでそれほど問題になるとは思われないが、アルカリなどの反応性の無機物やフライアッシュなどの大量の混和材はコンクリートの性能に直接影響し、しかも硬化したコンクリートから分離除去することが難しいだけに問題を含んでいる。

江戸時代には灰買い屋という商売があって各家庭の竈の灰を買い集めそれを肥料や染物や洗剤として売り、あるいは作り酒屋にも売っていたそうであるが、これなどは灰がきれいだったから出来たことである。昭和に入ってから灰買い屋があったかどうかは知らないが、戦後でもヒトを含む動物の排泄物や家庭の厨芥は肥料や豚の餌などとして利用されていた。これらの利用を可能にするために、各家庭は肥料や餌として用いるときに障害となるものがこれらの中に入らないように注意したものである。

いま建設の分野では、コンクリートに塩素やアルカリ元素が混入することに神経質であるが、これは目前のコンクリートの性能が低下するからであって、さらにリサイクルを考慮した取り組みも必要であろう。

将来のコンクリートのリサイクルを考えると安易にコンクリートを廃棄物処理場のように扱うわけにはいかない。


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