株式会社浅見製作所
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■亀の子コンクリート考
第七回:物変われば仕方変わる 小林 映章

先に、コンクリートは有機の接着剤ほどには接着時に大きな歪が生じないので、厚塗りの構造用接着材として使用できるということを述べた。しかしコンクリートも、セメントや骨材を水に分散させたセメントペーストを硬化させるものであるから、大なり小なり硬化体に歪が生じているはずである。この歪が他の物体と同じように強度に影響を及ぼすものであるかどうかは定かでないが、歪が小さいほどよいことは言うまでもあるまい。ここでは異質の物体の歪の低減法について考えてみよう。

さて、気体では分子の自由運動が激しく、一定の形状を取り得ないため、もちろん歪の生じようがない。液体の場合、我々が通常考えている液体では気体に準じて考えてよかろう。しかし極めて粘稠な液体では固体に近いものとして取り扱う必要がある。固体は分子あるいは原子の動きが束縛されているため場合により歪を生じる。

歪が生じるのは液体状態から固体状態に変わる場合である。液状の物質が、溶媒の蒸発や、温度の低下や、あるいは異なった成分間の反応等により固体状に変化すると、多くの場合まず準安定状態に落ち着き、次いで安定状態に移っていく。歪を持った物体はこの準安定状態にある。

溶剤に溶かしたプラスチックをガラス板上に流し、溶剤を急激に蒸発させて膜を作った場合、膜の両面や内部でプラスチックを構成している高分子の状態が異なっていると考えなければならない。したがってこのような場合、膜が強靭なものでは、湾曲するとか、ねじれるなどの問題が生じる。これは膜の場所による不均一に起因する歪によるものである。プラスチックの場合は固体の状態といっても、分子の熱運動が比較的低温でも活発なので、室温あるいは膜が融解しない程度の温度で膜に荷重をかけておけば、すなわち、アニーリングを行えば歪はなくなる。

古い時代に理工系の学校を出た人たちは、実験でガラス細工をやった経験があると思う。昔は上等な硬質ガラスがなく、ソーダガラス、いわゆる軟質ガラスを使用して細工を行った。このガラスでは、せっかくバーナーで溶かして細工したガラス器具が冷めると割れてしまうので、しばらくガラスが溶けない温度で暖めなければならなかった。すなわち、ガラスを構成原子が動き得る温度にしばらく保持して、準安定状態から安定状態に移すことによって蓄積した歪を除く必要があった。

プラスチックやガラスのように融点以下のある温度で原子、分子の熱運動が活発になり、安定状態に移ることができるものは、アニーリングにより歪を除くことができる。しかし、有機物でも硬化したエポキシ樹脂のようなものはアニーリングでは歪を除けない。コンクリートも同じである。コンクリートは強固な骨材の周りにセメント物質が水和物という強固な組織を作り、各種成分の移動を完全に拘束しているので、一旦生じた歪はなくならない。したがって、エポキシ樹脂やコンクリートでは硬化過程で安定な状態を保ちながら反応が進むように条件設定しなければならない。後での回復は望めない。これらは歪蓄積物質といえる.


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