新聞社がくれる月イチの小冊子に、風呂の入り方なるものの記事があった。
いまさらこの年になって風呂の入り方なぞ変えたくもない。が、のどかなイラストにひかれ、つい読んでしまった。どうもお湯はぬるめがいいようだ。41度を境に、温度が高くなるほど血圧、心拍、胃液分泌など危険サイドに傾くという。
ぬるめのお湯に、5、6分の半身浴を2,3回繰り返すのが身体によいそうだ。
子供のころ親からよく、「肩までつかりなさい、そうしないと風邪をひくよ」とよく言われたものだが、間違いだったということか。
とにかく、昔からの生活の仕方全般が、「健康に良いか」という尺度で改めて見直されている。日常坐臥いかに昔は馬鹿なことをやっていたかという啓蒙記事が盛んだ。その度に、愚かな我々は長年親しんだ習慣を見直すことになる。
歯磨きを朝起きがけのみ実行していたナンセンスは、金属冠に覆われた虫くい歯となり、若いころの愚かな生活習慣の名残りだ。わが父母の無知は時代のせいにする方が親孝行だ。
塩分を減らせ、米飯を食べ過ぎるな、ゆっくり、楽しく食べよ、など食事に係わる見直しはだいぶ昔のことだ。いま我々は健康のために食事をする。腹いっぱい食することは許されない。酒は一日一合までなら長生きする。ワインなら動脈硬化に効くからさらにお奨めだ。無味な野菜を馬のように大量に食べなければいけない。などなど。医食同源の思想が満ちている。
食事以外に、あらゆる立ち居振舞いが健康というキーワードで解釈される。健康の番人である医者の存在感はますます大きくなり、医者の人格はますます低下する。モルモットで健康になるためのヒントを発見し、それを人間に移転してくれる医学者は、まさに「ねずみの使徒」だ。医者の守り神はねずみ大明神にちがいない。
さて、ねずみ小屋の住人である私は、かあっと熱い風呂に入って、さぶチャンの唄でも一節、上がってイカの塩辛で冷えたビールをグーと行こうかい!
寿命3年短縮、南無阿弥陀仏。
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